Q & A: よくある質問とその回答をまとめました

Q1.歯だけでも鑑定できますか?

A1.歯からは多くの情報を得ることができます

 歯には、多くの情報がつまっています。実際、多くの四肢骨の骨片よりも、歯1本の方が鑑定には役立ちます。

 歯からは、まずその動物の種名がわかります。次に、歯からは、人骨であれば性別や死亡年齢も推定することが可能です。

 また、例えば、中近世の墓坑で歯しか出土しない場合は、乳幼児である可能性があります。乳幼児の場合、歯の萌出状態でかなり正確な死亡年齢を推定することができます。 

Q2.鑑定にはどれくらい時間がかかりますか?

A2.ケース・バイ・ケースです

 出土人骨や出土獣骨共に、土を落とすクリーニングを行い、乾燥させ、できるかぎりの接着復元を行います。その後で、観察・写真撮影・計測を行います。

 全身骨格が残存している場合と、歯だけではその時間が異なります。また、出土数にも大きく影響されます。例えば100体もあれば、膨大な時間がかかりますが、1体の場合はそうでもありません。特急で仕上げれば、1体の場合は1週間から2週間で仕上げることも可能です。

 さらに、報告書鑑定執筆依頼が殺到する時期になると、どうしても仕上げの時間が長くかかることになります。比較的すいている時期は、例年、1月~8月です。

Q3.遺跡で人骨が出土しましたが、現場で取り上げることは可能ですか?

A3.可能です

 遺跡で人骨や獣骨が出土した場合、その取り上げを行う場合もあります。また、発掘調査現場で、「人骨」か「獣骨」かあるいは「木」や「根」であると鑑定する場合もあります。

 出土した数にもよりますが、現場ではなるべく人骨を露出させ、できれば直射日光にあたらないようにしておくと人骨が乾燥して硬くなります。水分を含んだ状態のままだと、脆くなっています。この状態は、通常の乾パンは硬い状態ですが、水を含んだ状態では軟らかいのと同じです。

Q4.鑑定を依頼する場合、人骨はクリーニングしてから依頼した方が良いのでしょうか?

A4.できれば、土がついた状態で依頼してください

 これまでの経験では、ほとんどの場合土がついた状態で鑑定依頼をされています。もちろん、クリーニングしてから依頼される場合もありますが、その割合は5%ぐらいです。もし、クリーニングをする場合は、目が細かいフルイを使ってクリーニングをする必要があります。そうしないと、細かい破片や歯が紛失してしまい、重要な情報が失われかねません。

Q5.火葬人骨が出土しましたが、鑑定は可能ですか?

A5.可能です。火葬人骨からも多くの情報が得られます

 火葬人骨は、土葬人骨に比べると情報が無いとしてあまり報告が行われていませんでした。火葬人骨は、中近世に多く見られますが、縄文時代や弥生時代の再葬墓からも出土します。

 火葬人骨を詳細に調べると、死体の状態で火葬にしたのか、白骨化した状態で火葬にしたのかという火葬方法・火葬の際の温度・個体数・性別・死亡年齢等、土葬人骨と同様に情報を読み解くことが可能です。もちろん、土葬人骨に比べると精度は落ちますが、重要な遺物であることに変わりはありません。

Q6.鑑定を依頼する際に必要なものは何ですか?

A6.遺跡の概要を知ることができるものが必要です

 出土人骨や出土獣骨は、自分で発掘をしていれば概要がわかります。しかし、多くの場合そのような事例は非常に稀です。ですから、遺跡の概要を知ることができるものを、用意してください。一般的に必要なものを、以下にリストアップしました。

・基本情報(遺跡の住所・調査機関・調査期間・時代等)

・遺構全体図

・個々の遺構図(墓坑であれば、平面図と断面図)

・出土遺物のリスト(特に、墓坑出土遺物)

・写真(デジタル写真で可)